共生へ「手話の輪」拡大 富士宮市、言語条例成立
富士宮市が県内初の制定を目指していた手話言語条例が14日の市議会11月定例会最終本会議で、全会一致で可決・成立した。「手話は言語」の理解促進や政策推進を図る条例の誕生―。聴覚障害者や手話通訳者は「暮らしやすい社会の実現」に期待感を示した。
条例を審議した本会議場の傍聴席。市身体障害者福祉会聴覚障害部に所属する「ろう者」ら約20人が採決の瞬間を見守った。手話通訳者が笑みを浮かべて“可決”を伝えると、皆が両手をひらひらさせる“拍手”の手話で喜びを表した。
傍聴した人や須藤秀忠市長、市議は県内初の条例制定を祝う横断幕を議場内で掲げた。市手話言語条例推進委員会の実行委員長で、聴覚に障害がある女性(44)は「手話の輪が広がり、生活が豊かになる。『ありがとう』『いらっしゃいませ』の簡単な手話が広がるだけでもうれしい」と話した。
市内のろう者440人に対し、手話通訳者は5人にとどまる。市内唯一の手話通訳士(44)は「手話通訳が仕事として成り立たない現状がある。手話言語の条例PRと一緒に、仕事に対する理解普及も進んでほしい」と語った。
須藤市長は「福祉を大きく前進させる契機になる。計画的に施策を講じる」と述べ、啓発活動や手話通訳者養成に力を入れる考えを強調した。
■条例のポイント
2016年4月1日施行
・手話は共生社会の実現に必要な言語
・手話の理解促進と施策推進が市の「責務」
・ろう者の利用しやすいサービス提供と働きやすい環境整備が市民と事業者の「役割」
■浜松市、県も条例検討
富士宮市と同様に、来年4月の手話言語条例施行を目指す浜松市では、市民意見を募るパブリックコメントが11月11日に終了した。市は意見に対する考え方をホームページや冊子で1月12日から公表し、2月議会への議案提出を目指す。
県も条例制定を検討する方針。障害福祉課の渡辺加絵課長は「制定に向けたスケジュールは未定」とした上で、「手話を使う方々の要望や市町の意向を踏まえ、意見交換しながら進めていく」との構えを示す。
こうした動きを背景に、県聴覚障害者協会は県に提示するための素案づくりに取り組んでいる。小倉健太郎事務局長は「来年4月までに素案を完成させ、再来年4月の県条例施行を働きかけていく」としている。
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