県議会「手話条例」検討

◆元「筆談ホステス」斉藤区議「独自の言語、認識深めて」


 手話を言語と位置づけて理解や普及を促す手話言語条例の制定を目指し、県議会が昨年末から検討を重ねている。10日の条例検討会には、元「筆談ホステス」として知られ、昨年4月の東京都北区議選で当選した斉藤里恵さん(32)を招き、聴覚障害者が活動しやすい社会の実現や条例の必要性などについて意見を聴取した。(竹田章紘)

 手話については、国連が2006年、言語に手話を含める障害者権利条約を採択。国内でも11年の東日本大震災で、手話による情報提供の必要性を求める声が改めて高まり、条約の趣旨を盛り込んだ改正障害者基本法が施行された。

 こうした状況を受け、鳥取県が13年10月、全国の自治体で初めて手話言語条例を制定。全日本ろうあ連盟(東京)によると、同様の条例は1月20日現在、神奈川、群馬県など全国3県、30市町に広がっており、県内では松阪、伊勢市で条例が制定されている。

 ただ、県によると、聴覚・平衡機能障害の人は昨年4月1日現在、県内に7405人いるが、公的資格の手話通訳士は132人にとどまるなど、聴覚障害者を取り巻く環境は十分とは言えない現状だ。

 斉藤さんはこの日、条例検討会委員の県議13人を前に、スライドを使いながら自身の生い立ちや、聴覚障害などについて約1時間説明。「手話は独自の言語という理解が必要。当事者への聞き取りを行うなどして認識を深めてほしい。障害者が活躍できる環境をつくるためには、条例の制定は重要な政策だ」と訴えた。

 検討会を傍聴していた聴覚障害を持つ津市の佐藤えつ子さん(50)は「手話通訳士がいないと会話に加わることができない。手話で言っていることを伝えるためにも条例は必要で、制定して中身のある内容にしてほしい」と話した。

 委員らは今後、特別支援学校を訪問するなどして検討を重ね、県議会6月会議への条例案提出を目指す。