広がる手話条例 障害への理解深めたい

聴覚障害者が暮らしやすい社会をつくりたい―。そんな思いが広がっているのだろう。

 道内で手話条例を制定する自治体が増えている。手話を言語と位置づけて普及を図り、聴覚障害者の意思疎通が円滑に行われるような環境を整備するのが目的だ。

 聴覚障害への理解が進む。各地の動きを歓迎したい。

 聴覚だけでなく、さまざまな障害に対して支援を促す条例の準備も進みつつある。

 加齢などによって障害者となる人が今後、増えるとみられている。配慮がいっそう求められる。条例の拡大は安心できる社会づくりを後押しするに違いない。

 道内では石狩市で2013年12月に、全国の市町村では初めて手話条例ができた。その後、十勝管内新得、鹿追の2町と名寄市が続き、4月に施行予定の登別市を含めれば5市町になる。

 全国ではまだ33の自治体にとどまっており、その15%を占める北海道の自治体は、けん引役になっていると言っていい。

 石狩市は講習会の開催や小中学校への出前授業の実施などで、手話の普及に努めている。通訳者を配置して、聴覚障害者がスマートフォンなどを使って電話ができるよう手助けする仕組みも整えた。

 道や札幌市、帯広市なども制定に向けて準備を始めている。

 札幌市が検討している「手話・障がい者コミュニケーション促進条例(仮称)」は、聴覚や視覚、知的など障害の内容を問わず、支援することを目指している。

 手話のほか、点字や音訳、要点をまとめて筆記で伝える「要約筆記」などを、意思疎通の手段として条例に盛り込むことを視野に入れているという。

 「手話基本条例」の制定を目指している高橋はるみ知事も、同様の考えを示している。

 条例の対象を広げることは、住民が多くの障害に目を向けるきっかけになる。それをまちづくりに生かせば、住む人に優しい共生社会の実現に結びつくだろう。

 道内は急速な高齢化の影響で、障害者は年々増加している。聴覚や視覚を含む身体障害者に限れば、14年3月末で30万人超だ。10年前に比べ3万人以上も多い。

 誰もが生活への安心感を高めたいと願っている。だからこそ、障害があっても自立していける環境を早急に整える必要がある。

 そのためには、手話通訳者や介護者など、障害者を支える側への支援も欠かせない。